「按摩師甚五郎」 3(ショートショート)
「按摩師甚五郎」ゲーム(2)
「・・・と、インドでそんな興味深い経験をしました」。
「ふ~ん。甚ちゃんはラッキーだったのね。」
時々治療室に遊びに来る姪の萌菜(もな)が素っ気なく答える。
「はい、とてもラッキーでした。あのゲームのアイデアがやって来たことで、世界に対する自分の緊張に気づけましたから。」
「ホント、いいホテルが見つかって良かったね。」
「はい、それもとてもラッキーでした。望んでいたことが想像以上の形で現実化したのですから。世界は人の思惑を超えたものを用意してくれます。」
「・・・よくわかんないけど。思っていたものよりジャストフィットなお部屋だったのね。」
「はい! そういうことです。やはり萌菜子さんは賢いです。」
「もう! だからぁ。私の名前に子はつかないの! なんかお年寄りみたいでしょ!?」
「お年寄りは嫌いですか?」
「そこじゃなくって!」
「で! さっきのお話しは、世界とか緊張とかとどう関係があるの?」
「誰か、または何かに対して身構えていると、私たちは外界から身を守るために体を緊張させます。」
「でも、それってそう考えてる時だけで、いつもじゃないんでしょ?」
「いえ。そういう想いがあると無意識ではありますが常態化するので、その緊張は体の凝りになります。」
「凝りって・・・。体がカチカチになっちゃうの?」
「体が外界に対して開かれていると、皮膚はつきたての餅のように瑞々しいです。ですが、閉ざした途端皮膚の流れが澱んで弾力がなくなります。極端にいえばウェットスーツを着込んだような。そういう状態も凝りと呼びます。」
「うぇ。なんかすご~く気持ち悪そう。」
「はい。身は守れますが、遮断されているので外界をリアルに感じることが出来ません。体は重く感じられ行動力も鈍り、思考の幅や視野も狭くなります。」
「嫌だぁ~。そういうの。」
「極端にいえば、ということですが、澱み方の程度によりその傾向は強くなります。」
「じゃあ。その"世界に開いてる"だっけ? どうしたらそうなれるの?」
「はい。"私は世界に対して開いている"と思うとよいです。」
「・・・なんかさ。甚ちゃんって見た目ゴツイけど意外とお花畑なポエマーよね。でも嫌いじゃないわよ、そうゆうの。」
……(続く)
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