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2016/05/12

導引と内丹:「古今導引集」を読む1

渾沌(コントン)として未だ判ぜず。
陰陽未だ動かざるの先万物寂寥(セキリョウ)有り名づけて元霊一気と謂う。
茲に既て以て頣養之を練(ネ)るの道を守る。
※頣養(イヨウ):栄養をとらせてやしなう。転じて、中にかこんで大事に育てること。

・意訳
陰陽が未だ分かれず未だ動かない宇宙誕生以前。
そこは渾沌としながら静かに寂寥としており、ここにこそ頣養を練る道、元霊一気が守られている。

両儀立ち而して生(セイ)生(ウマ)る。
易に曰く柔剛相摩(マ)八卦相盪(ウゴ)く。
又曰く柔剛相推し変化(ヘンゲ)を生ず。

・意訳
渾沌とした元霊一気から陰陽両儀が生じ、ここにはじめて動きが生じた。
周易繋辞上伝に曰く「易に太極あり、これ両儀を生ず。両儀は四象を生じ、四象は八卦を生ず」。
陰陽両儀は四象(変化の現れ。四時:春夏秋冬)を生じ、四象は万物たる八卦を生じる。
また周易繋辞上伝に曰く「剛柔相摩し、八卦相盪かす」、更に曰く「剛柔相推して、変その中に在り」と。
陰陽剛柔が互いに接し触れ合うことで、またさらに万物万象である八卦もまた互いに動かしあうことで変化が生じる。
陰陽剛柔が互いに交錯することの中にこそ多様性に満ちた変化が生じるのだ。


・メモ
古くは導引按摩または導引按蹻とも呼ばれる「按摩」ですが、そもそも「導引」とはどういう意味なのでしょう。

【導引】
道引とも書き、〈吹呴呼吸し、故気を吐き新しきを納る〉(「荘子」刻意篇)とあるように、正気を導いて体内に入れ、これによって心身を調整する道家の養生法のひとつ。
……略……
長生術という観点よりすると、導引は調息・房中とともに内丹に含まれる。
   平河出版社「道教事典」より

「荘子」刻意篇では「吹呴呼吸し、故気を吐き新しきを納る」の後に「熊経鳥申し、寿を為すのみ」と続き、古い淀んだ気を吐き出し新鮮な気を取り入れること、熊や鳥のようにゆったりと大きく動かすことが長寿の秘訣だとしています。
導引とは、古い淀んだ気を体内に残さずに吐き出して常に新鮮な気を取り入れ、体がのびのびゆったりと動くように保つことと考えてよいようです。
それを他人に施すのが導引按摩。

こういった養生法的導引もありますが、中国古代の実践的瞑想法でもある「内丹に含まれる」とあるので、内丹についても見てみましょう。

中国内丹界の第一人者であり自ら内丹家でもある胡孚琛の論文「内丹学の原理と理論体系」が極めて優れているので、そこからいくつか引用してみます。
(同論文の日本語訳→胡孚琛著「内丹学の原理と理論体系」

内丹学は術として道教に仮寓する文化体系であり、千巻にも上る《丹経》は実質的には内丹家が代々受け継ぐ人体システム工学実験の実施記録だ。
このことから言っても、内丹学は道家と道教文化の宇宙論と人生哲学、人体観、修行経験をひとつにし統合する理論体系であり行為モデルでもある。
またこれは、人体の深遠なる神秘の探求と人体の潜在能力開発のために修煉するひとつのシステム工学でもある。

ぼくは中国語がチンプンカンプンなので、翻訳ソフトを参考に中国語を日本語漢字変換した漢文から日本語訳しています。
胡孚琛氏の文章は格調が高くとっても漢文チックなので、苦労はしますが意外と訳しやすいです。
文章に気合いが入っていて物凄くカッコイイ文章です。

内丹学は一種の不老不死、絶対的に永久不変の状態を追求するが、物質の推移は熱力学第二法則のもとエントロピー増加傾向にあり、動植物はすべて、生まれ、成長し、成熟し、衰え、老化し、死ぬというプロセスをたどる。
生まれたものはすべて最終的にはみな滅びる運命にあるが、これは自然科学の法則だ。
しかし内丹学家は逆に永久不変の滅しないものを探り出した、これこそが"虚無"だ。
丹家は虚無を"○"と描き、一個の丸い輪を用いて宇宙が未だ創生される以前の状態を表した。 実質的に、虚無とは道だ。
道家、道教的宇宙創生進化のビジョンと人体生成説によれば、宇宙と人体生命の生成はすべて道にその源を発する。
道は虚無状態の中よりまず元始の先天一炁(又は太乙真気、先天祖気という)を化生して生み、このような先天一炁こそが宇宙万物の運動が生気に満ちあふれ、また人体と生命活動の源泉だとみなされる。
その後先天一炁より陰陽ふたつの性質が化生して生じ、"一陰一陽之を道と謂う"というように、陰陽学説は天道、人道、丹道の宇宙根本法則を貫いており、中華民族伝統の智恵およびすべての学問の出発点なのだ。
初期状態の宇宙は陰陽二性質により激しく混じり合い揺れ動き、物質、エネルギー、情報の三大要素を生み出し、更にこれら三要素の進展変化により入り乱れた世界に万物が創り出される。
これが老子《道徳経》の中にある"道は一を生じ、一は二を生じ、二は三を生じ、三は万物を生ず"の宇宙生成変化の図式だ。

「古今導引集」も、まさにこの宇宙生成変化の図式からはじまりまっています。
はじめは体裁を整えたり威厳を付加するための定型的枕詞的なものかと思っていましたが、どうやら激しく重要な基本のようです。

丹家は人体自身を一個の小宇宙だと見なし、それと天地の大宇宙は相互に感応しており、人体生成の図式も宇宙進化の図式も理論上にあっては一致する。
陰陽五行学説と天人感応原理は中国哲学の理論的支柱であり、内丹学の法訣も天人相通の理論を根拠に設計されている。
丹家はただ混沌状態に入ることと宇宙初期の状態と互いに感応させることを考え、それによって先天一炁を招聘する。

このような先天一炁はビッグバン以前の情報源であり、時間と空間がまだ展開していない初期情報であり、自然界にあって最も根本的な内在律動なのだ。

初期宇宙の中に隠されていた秩序は、普遍的宇宙律動を生む情報源だ。

内丹家は人体律動と宇宙律動とを調和させる技術を通して、人体の精、気、神などの元素を充分に励起させ、量子レベルにおいて自然界の根源と相互作用し、宇宙の中に残留する初期情報を体内に招聘するに到り、これにより後天を先天に返じて天人同一の境界に到達する。

導引はこのような壮大な内丹的世界を背景にしているのだということを念頭に、今後も「古今導引集」を読んでいきたいと思っています。

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