朝日新聞 06/11/19(日)
中沢新一が語る仕事>(2) 「ニートは日本人本来の姿かも」より
>自然を支配し産業を加速するという方向で先進国が走ってきた結果、地球全体
>の環境問題が発生してきました。
>日本人はこの問題に立ち向かっていける思想を、歴史的時間をかけて育んでき
>ました。
>日本人がずっと抱いてきた自然への思想からしか、答えは生まれてこない。
>その日本人本来の思想を取り戻す大きな芽として、ニートは生まれるべくして
>生まれてきたとは考えられないでしょうか。
>産業と教育の落ちこぼれというネガティブなとらえ方は、何か大切なものを見
>落としていると私は思います。
上記の文章を読み、東洋哲学の基本中の基本である「太極図」を思い浮かべていました。
上図は季節を書き入れたものですが、太極図はすべての事象にあてはめることが出来ます。
・五行: 木 火 金 水
・季節: 春 夏 秋 冬
・一日: 朝 昼 夕 夜
・人生: 成長 成熟 老成 胎養(死)
この、人生でいえば(死)胎養~成熟までのプロセスを「陽遁」と呼び、成熟~死(胎養)までのプロセスを「陰遁」と呼びます。
中沢新一さんの語る「自然を支配し産業を加速する」、「産業と教育の落ちこぼれ」を生むような社会は、この太極図の陽遁だけにしか目を向けない社会に思えます。
陽遁の主な特徴は、その成長性と外向性にあり、西洋文化と重なります。
陰遁の主な特徴は、老成と内向性にあり、東洋文化と重なります。
ですが、今の日本を眺めた時、生活様式はもとより文化的にも西洋化の度合いが強くなっています。
日本が本来持っていた枯れた文化、「わびさび」や「もののあはれ」、「粋」を愛する文化は、取り戻せない状況まで来ているのかも知れません。
ですが、それでも日本のみならず西洋社会の中にあっても「陰遁」的要素は必ず持たなくてはならないのです。
人はいつまでも成長期、成熟期にとどまっている訳ではなく、老いて死を迎えるのが必然なのですから。
枯れてゆく文化、死を迎える文化は必ず必要なのです。
また、現代社会は陽遁的社会ではありますが、人すべてが陽遁的要素を持つとは限りません。
生まれながらに陽遁的要素を強く持ち、陽遁的社会にそれなりに順応出来る人がいるのと同じだけ、陰遁的要素を強く持ち、陽遁的社会に順応出来ない人もいることでしょう。
中沢新一さんの語るニートは、またはこれに引きこもりや鬱といったものも含めてもよいと思うのですが、この陰遁的要素を強く持つ人々なのかも知れません。
そして現代日本は、この陰遁的要素を活かし陰遁的文化を取り戻すチャンスを手にしているのかも知れないです。
みたいなことを、つらつら考えていた冬の雨の日。
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