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2006/04/08

無資格マッサージ問題・まとめ

あれは確か2004年新年のことだったと思います。
新聞報道等で無免許マッサージ検挙の報道がぼちぼち見かけられるようになりしました。
実際の検挙は、マッサージ業務を行うマッサージ店で無資格のそれも不法就労の外国人従業員を雇っていた例が多かったです。

ところで、無資格マッサージとひと口いっても、その言葉の用いられ方や該当例がいくつかあります。

  1. あん摩マッサージ指圧業をあん摩マッサージ指圧師免許なしで行う
  2. あん摩マッサージ指圧業を鍼灸師または柔道整復師があん摩マッサージ指圧師免許なしで行う
  3. 民間療法業(カイロ、整体、タイ古式マッサージ、アロマ、リフレクソロジー、エステ等)をあん摩マッサージ指圧師免許なしで行う
  • 1.は、明らかな違法行為であり摘発対象となります。 あん摩マッサージ指圧、またはそれに類するかそれを連想させる名称で業務を行った場合、違法行為となります。
  • 2.に関しては、一般の人の関心を呼ぶことはほとんどなく、もっぱら同業者間で指摘や批判が行われるものです。 おそらく実際の摘発例はないのではないかと思います。

    あん摩師、はり師、きゅう師及び柔道整復師法(以下法という。)第一条に規定する行為の個々の具体的内容については法的に明確な規定がないが、法第五条に規定するあん摩師及び柔道整復師の施術は、法第一条との関係の下に夫々あん摩師及び柔道整復師の個々の業務範囲におけるものと思料されますが、柔道整復師が柔道整復行為を行うに際し、&color(brown){社会通念上、当然に柔道整復行為に附随すると見なされる程度のあん摩(指圧及びマッサージを含む)行為をなすことは差支えないと解してよろしいか。
    貴見の通り。

    上記引用は、柔道整復師が付随的に行うマッサージに関する厚生労働省への質問とその回答です。
    鍼灸師に関しても同様に考えて良いと思います。
    同業者間では感情的に納得しない人々もおり様々な議論がなされているようですが、公衆の利益に反するか否かという観点から見れば、実際に事故等の報告や経営上の違法性がない限りそれぞれの社会的良心に任せるということしか出来ないのではないかと思います。


  • 3.このページの最初に書いた2004年当時、この部分に関してはものすごく不明瞭にしか理解していませんでした。
    ぼく自身、マッサージ的手技を用いるボディーワークや国家資格のない治療法である操体法を行っている訳であり、友人の中にはあん摩マッサージ指圧師免許なしでそれらを行っている人もいます。
    2004年新年から突然増加したかのように見えた摘発例を目にし、法律や厚生労働省の通達、国会会議録を調べだしたのでした。

この無資格マッサージ問題は、実際に調べる以前はとても曖昧で玉虫色に見えたものですが、実際に調べてみるとかなりシンプルであることが分かりました。
ここに、その個人的に理解したことをまとめておきたいと思います。
もし間違いや曲解がありましたら、是非ともご指摘お願いします。

また、この問題に関しては、もともと鍼灸あん摩マッサージ指圧師の側からかなり感情的な反論があります。
しかし、ここにまとめていることはあくまでも「今の日本国ではどのように”あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律”が運用されているのか」を明らかにするのが目的であり、「法律をどのように運用、適用するべきか」といった鍼灸あん摩マッサージ指圧師的視点からの問題とは無関係であることをお断りしておきます。


法律と最高裁の解釈

第一条、第十二条

  • 第一条
    医師以外の者で、あん摩、マツサージ若しくは指圧、はり又はきゆうを業としようとする者は、それぞれ、あん摩マツサージ指圧師免許、はり師免許又はきゆう師免許(以下免許という。)を受けなければならない。

  • 第十二条
    何人も、第一条に掲げるものを除く外、医業類似行為を業としてはならない。
    ただし、柔道整復を業とする場合については、柔道整復師法(昭和四十五年法律第十九号)の定めるところによる。

上記が「あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律」(以下あはき師、あはき法という)の第一条と第十二条です。
このふたつの条文だけを見れば、医師、あはき柔師以外の人が医業類似行為(各種民間療法を含む)を業とすることは違法だと考えると思います。
実際、このあはき法が制定された敗戦直後の昭和22年、免許制とすることで当時広く玉石混淆状態で行われていた様々な療術行為を排除するのも目的のひとつでした。
ですので、この十二条は必須条文だったのでしょう。
ですが、この13年後の昭和35年、最高裁判所で画期的な裁定、法解釈がなされます。

昭和35年最高裁判決

訴えは、HS式無熱高周波療法という療術があはき柔法違反とされた事に関して
「HS式無熱高周波療法は有効無害かつ公共の福祉に反しないので、これをあはき柔法違反とするのは、そもそもあはき柔法が憲法二十二条に違反する無効な法律なので、禁止処罰することは出来ない。」
という上告です。
(第二十二条【居住・移転・職業選択の自由、外国移住・国籍離脱の自由】
 1.何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。)

これに対して最高裁は上告を棄却。
その要旨は

  • 一.あん摩師、はり師、きゆう師及び柔道整復師法第一二条、第一四条が医業類似行為を業とすることを禁止処罰するのは、人の健康に害を及ぼす虞のある業務行為に限局する趣旨と解しなければならない。
    (第一四条:違反行為に対して定める刑罰)

  • 二.右のような禁止処罰は公共の福祉上必要であるから前記第一二条、第一四条は憲法第二二条に反するものではない。

まとめると

あはき柔以外の医業類似行為は、人の健康に害を及ぼす虞のある業務行為に限局して禁止処罰する

ということであり、

人の健康に害を及ぼす虞がない限り、医業類似行為(民間療法)等の業務行為を行ってもよい

ということになります。
そして、この最高裁判所の判決、あはき柔法第十二条の解釈が、現在まで日本国のあはき柔法解釈や運用として続いています。
これだけでも十分納得出来かつ明解なものではあるのですが、社会通念や世相からかあはき柔以外の医業類似行為や民間療法は法的にグレーな衣を纏っていた印象があります。

とはいえ、上記最高裁判決の影響は確実に反映されていきます。
あはき柔法ではその業の目的を問わずあん摩マッサージ指圧行為は違法行為とされる訳ですが、オイルマッサージ(最も”あん摩マッサージ指圧”中の”マッサージ”に該当する)をその主業務とする美容目的のエステティック産業は、あはき柔法に問われることなく(その議論さえ生じず)急成長し、今や一大産業として成立しています。
このこと(エステティック業があはき柔法と無関係に許容されている)は、国民にとって今や常識でありひとつの大きな社会通念となっています。


民間療法の積極的容認

上記昭和35年(1960)最高裁判決からの20世紀の間は、国はあはき柔以外の医業類似行為、民間療法に関して明確に言及することはありませんでした。
しかし、21世紀を迎えて国の法解釈や運用はもう少し積極的なものとなっていきます。
厚生労働省は平成15年(2003)4月、「内閣府ホームページ」内の国政モニター「お答えします・介護と整体治療」という中で整体、カイロという具体的名称をあげたものを公開しています。

「整体治療」や「カイロプラクティック」については、その医学的効果について科学的評価が未だ定まっていないことなどから国家資格とはなっておらず、いわゆる民間療法として、人の健康に害を及ぼすおそれのない限度で施術を行うことが認められているものです。

これまであはき柔以外の医業類似行為や民間療法に関して明確に言及してこなかった国は、ここで「整体とカイロプラクティックは業として行うことが認められている」ものとして明言しています。
また同じ年の11月には厚生労働省から以下の通達も出ています。

施術者の体重をかけて対象者が痛みを感じるほどの相当程度の強さをもって行うなど、あん摩マッサージ指圧師が行わなければ、人体に危害を及ぼし、又は及ぼすおそれのある行為については、同条のあん摩マッサージ指圧に該当するので、無資格者がこれを業として行っている場合には、厳正な対応を行うようお願いする。

これは、あん摩マッサージ指圧の定義に関するものですが、わかりやすくまとめると以下のようになります。

人体に危害を及ぼし、又は及ぼすおそれのない行為は、あん摩マッサージ指圧に該当しない

要するに、昭和35年最高裁判決の

人の健康に害を及ぼす虞がない限り、医業類似行為(民間療法)等の業務行為を行ってもよい

上記判断を、あん摩マッサージ指圧業に当てはめて再確認したものと思って良いでしょう。

ここまで書いてきて思うことは、こういった認識は当のあはき柔師には納得しにくいものだろうということです。
あはき柔学校では、医事法規であはき柔法は教えますが、その法解釈や運用状態についてはまったく触れられないからです。
そのあはき柔法解釈はあくまであはき柔師側から見た、ガチガチの法律そのものであり、最高裁判決や社会通念、世相が考慮されていないものです。
法律や業界の職域だけを見るのではなく、現実を確認し受容した上で公衆の利益を考慮し、法や行政のあり方を議論していけると良いのですが……。

ともあれ、近年の国の姿勢は上記にまとめたようなものです。
これは、先に書いたエステティック業が許容されてきた歴史に加え、最近のリラクゼーション業の増加による影響が強いと思います。
高度に情報化しストレスに満ちた現代社会にあって、多くの人がリラクゼーション業で提供されるものを求めているのはごく自然なことでしょう。
それには、リラクゼーション目的のマッサージも含まれています。
(タイ古式マッサージ、アロママッサージ、ロミロミ、リフレクソロジー等)
美容目的のオイルマッサージであるエスティックが許容されてきたように、目的によってはマッサージを業務として行ってもよい旨、法律を改めるべき時がきたのかも知れません。

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